平成10年度 九州数学教育研究大会 in 熊本
中学部 第3分科会

『図形学習の意欲を高めるコンピュータの利用』
=Geometric Constructor(作図ツール)による図形学習を通して=
熊本市立桜木中学校
武田 裕二


 

(2)TTにおける取り組み

☆親子ピラミッドの軌跡(変形,軌跡)

親子ピラミッドの図を変形しているうちに,軌跡が円になる。一人の教材研究では気づかなかった性質をTTの取り組みをする中で発見することができた。教師自らが発見の喜びを経験し,それを生徒に伝えるというまさに学びながら楽しみ,授業を展開することができた。

(a)作図ツールとの出会い

 「作図ツール」というのは、作図、変形、測定、軌跡等を行えるソフトの総称である(「コンピュータで数学授業を変えよう」飯島康之・磯田正美・大久保和義編著 明治図書より引用)というのが、Geometric Constructor(以下GC)の開発者である愛知教育大学の飯島康之先生の定義である。
 私が、初めてGCと出会ったのは、1992年である。その当時、授業で使うソフトは自分で作っていたし、ツールとしてのソフト活用の視点がまだ自分にはなかった。ところが縁あるもので、1995年に再びGCと巡り合った。転勤によるコンピュータ環境の変化(NECから富士通へ)で、ソフト開発の意欲はなかったし、世の中の流れがが「教師の役割はソフトを開発することでなく、ソフトをいかに活用するかである」に傾いていたことに私の心は揺れていたときであった。

 そんな折り、校内の研究授業をすることになった。中学3年生の12月といえば図形しかないし、私の心はGCに傾いていった。昨年度の県数大会でも、長陽中の堀尾先生がカブリという作図ツールを使った授業をされており、「よし、やってみよう」ということになった。とはいうものの、私は、何の目的でGCを使うのか、自分自身はっきりしていなかったのである。数学科による事前研究会でも、私の心にはまだ迷いがあった。「まあ、とにかくさわってみよう」とGCで教材をいじっていくうちに、だんだんおもしろくなり、のめり込んでしまった。そして、ついには「親子ピラミッドの奇跡」の発見へとつながったのである。このことは「コンピュータで数学授業を変えよう」のp47にもすでに載っていた。しかし、私にとって、初めての発見だったのである。こんなにも新たな発見が嬉しい、おもしろいという本当に数学を楽しいと感じた時間であった。この「おもしろい・楽しい」という私の思いは、数学科の事前研究会でほかの先生方にも伝わった。これから、TTの相棒の岩下先生との楽しい授業準備が始まったのである。
 以下の実践は、まだ数学の視点で見れば、未熟な点が多々あるであろう。しかし、この作図ツールには、もっと多くの先生方につついてもらうだけの価値があると思う。「コンピュータで数学授業を変えよう」という本のタイトルは決して過言ではないと思えるのである。私自身まだ、GCを活用しているとは言えない。しかし、図形についての考察をする際に、「GCを使ったらどうなるかな」と言う新しい視点を持てたことを喜びとしたいし、ほかの先生方へも伝えたいのである。では、私の未熟な実践「親子ピラミッドの奇跡」をつついてほしい。

(b)実践の実際

@題材名 「親子ピラミッドのきせき」(課題学習)1時間取り扱い

A題材について

○親子ピラミッドは,第2学年の三角形の合同の学習で取り扱う有名な図の1つである。本題材では,この親子ピラミッドを新たな視点で考察することで,図形についての考察力,論理的思考を高めることをねらいとしている。
 本題材は,三角形の合同と円の性質の学習の課題学習として取り扱う。特に,第2学年で学習した親子ピラミッドを第3学年で学習した円についての知識を使って考察することは,中学校における図形の総合問題としても適していると考える。
 
小 学 校 中 学 校 1 年 中 学 校 3 年
@ものの形を認めたり,形の特徴をとらえたりすること。 
B円について中心,直径及び半径を知ること。 
D円の面積について知ること。 
円周率の意味の理解,円をもとにして正多角形をかいたり,正多角形の基本的な性質を調べたりすること。 
E線対称及び点対称の意味について理解すること。 
・円柱,円錐 
D平面図形 
・点の集合と図形 
・基本の作図 
・円の弧と弦と中心角の関係 
D円の性質 
・円と直線,・2つの円 
・円周角,・円周角の定理を使って 
E図形の計量
中 学 校 2 年 高 等 学 校 
D図形の調べ方 
・三角形の内角の,・四角形の内角の和 
E図形と合同 
・三角形の合同条件 
F図形と相似 
・三角形の相似条件 
数学1・三角比と図形 

数学A・平面幾何 

数学2・円の方程式

○本学級は,男子19名,女子17名,計36名である。全体的にまじめであるが,発表等の活動に対してはあまり積極的とは言えない。学習に対する意欲は,全体的に向上しつつある。

【実態調査より】

ア)円についての定理の理解

 円周角の定理1(86.1%),円周角の定理2(55.6%),円周角の定理の逆(19.4%)
 内接四角形の性質1(80.6%),内接四角形の性質2(80.6%),接弦定理(83.3%)

イ)親子ピラミッドの三角形の合同証明

 ○完答(30.6%),△部分点(44.4%),×間違い・無答(25.0%)

ウ)数学に関するアンケート

○数学は好きですか 5(10.8%),4(21.6%),3(32.4%),2(18.9%),1(13.5%)
○数学は得意ですか 5( 2.7%),4(16.2%),3(16.2%),2(35.1%),1(27.0%)
○TTは必要ですか 5(22.2%),4(36.1%),3(27.8%),2(8.3%),1( 2.8%)
 円についての定理の理解については,本題材で必要な円周角の定理の逆に対する理解が低いので考慮する必要がある。親子ピラミッドの証明については,4人に1人はほとんどできないので,グループ学習等で支えあう学習が必要であろう。
 数学に対する好き嫌いでは,好きが32.4%,嫌いが32.4%と変わらない。これに反して,得意が18.9%,苦手が62。1%と苦手意識が強いことがわかる。これは,数学に対する不安要素が高いとともに,不安に対する解決手段を持たない傾向が強いことがわかる。TTについては,58.3%が必要,11.1%が不必要であり、必要とする生徒が圧倒的に多い。
○今回の学習では,コンピュータを作図ツールとして活用することで,図形に対する新たな考察を取り入れることが大きな目的である。今までの学習では味わうことのできなかった新たな感動・数学的美しさを体験できることを望みたい。
 円の学習を終え,中学校の図形領域の学習は終わりを告げようとしている。しかし,生徒の学力の進度の差は広がる一方である。本題材では,コンピュータを確かめる,そして考察するための道具として活用したい。また,グループ学習,TTによる個に対応した授業に努めたい。実態調査によると,円についての定理の理解はだいたい達成しているが,厳しい状況の生徒が4人いるので,グループの設定や机間支援等で配慮したい。
 

B指導のキーワード

ア)ティーム・ティーチング(千葉大学教育学部附属中学校副校長 五十嵐 一博)

※アンダーラインの部分が,今回の授業における活用の視点である。
   
◎ティーム・ティーチングの利点
○興味・関心に応じた選択コースにより,意欲的に学習に参加できる。 
○理解や習熟の度合いに応じた学習形態の選択により,生徒が自主的・主体的に取り組むことができる。 
●より多くの教師の対応により,きめ細やかな指導・助言ができる。 
●教師間の情報交換により,よりよい方法で指導できる。 
 
◎ティーム・ティーチングの形態 
○学級単位のティーム・ティーチングで,普通教室で行う。(ア) 
○学年ティーム・ティーチングで,複数の教室かオープンスペースで行う。(イ) 
 
◎活用場面 
○1人が通常の一斉授業を行い,もう1人が机間巡視等で補足説明をする。 
○コンピュータを取り入れた学習で,(ア)の形態で行う。 
○個別学習を中心とした学習で,(イ)の形態で行う。 
○いくつかの学習課題が設定されたグループ学習で,(イ)の形態で行う。 
 
 ティーム・ティーチングは,個に応じた指導,指導形態の多様化を目的として考えだされたものであろう。少人数への対応,生徒の主体的学習への対応を考えると,ティーム・ティーチングが果たす役割は大きいと考える。しかし,今まで1人で自分の思うままに進めてきた授業から考えると,2人体制によるティーム・ティーチングは,まだまだ敷居が高いのが現状である。正直言って,毎回のティーム・ティーチングをきめ細かい打ち合わせをして実施することは難しい。できるだけ,普段着の生徒・教師のゆとりにつながる普段着のティーム・ティーチングをめざすことが大切ではないだろうか。
 

イ)コンピュータの活用

 学校にコンピュータが導入されたが,まだまだ積極的に活用されていると言えるだろうか。。数学科においても,コンピュータの活用を積極的に受け入れ,多くの実践が試みられてきた。本題材においては,数学に新たな世界を導いてくれる作図ツールを使うことで,コンピュータを道具として活用したい。

◎今回検討した作図ツール
・Cabri・・・予算がない。TOWNSでは動かない。
・てんてんまる・・無料である。サポートが可能である。
・Geometric Constructor・・無料である。サポートが受けられる。

 他の市販ソフトもいろいろとあるが,予算を考えるとCabriと同じく,不可能である。そこで,てんてんまるかGCを利用すべき作図ツールとして考えた。
本題材では,軌跡を表示する点でGCを選択した。
 しかし,ソフト選択以前に,作図ツールの目的意識をはっきりする必要があろう。なぜ,作図ツールか。なぜ,図を動かすのか。この点を論じることが先決問題である。今回は,次の点に絞って作図ツールを活用することとした。
 
・作図ツールを使って,教材研究を深めることで,生徒たちが意欲的に取り組む学習課題を設定することができる。 
・作図ツールを使って,問題解決に当たることで,一つの問題を多面的にとらえたり,新たな発想で図形の性質を調べることができる。 
・コンピュータをグループ学習の中のコミュニケーションツールとして主体的な問題解決学習に役立てることができる。
 
 

C本時の学習

ア)本時の目標

○親子ピラミッドの図の中で,同一円周上にある4つの点について,考察を深めることができる。
○作図ツールを使って予想したことを確かめるとともに,新たな視点で図形を考察することができる。

イ)本時の展開

 
指導 

過程

学 習 活 動 学習 

形態

 発 問・指 示
教 師 の働 き か け 
備 考
T1
T2
導入 
5分
1.2年で学習した親子ピラミッドの復習をする。     ・コンピュータは事前に起動しておく。 ・親子ピラミッドの図を提示し,三角形の合同の証明の学習を振り返る。 フラッシュカード
 課題 

把握 

7分

2.本時の課題を知る。 一斉 
 
・親子ピラミッドで三角形の合同を証明したことを思い出そう ・教師用コンピュータで操作しながら,図形を変化させても,変わらないものは何かに視点を当てて見ることを押さえる。  
 
 

・生徒の様子を見ながらT1の補助をする。

コンピュータ一 

斉送信

親子ピラミッドの奇跡を発見しよう!
@親子ピラミッドを動かしてみよう。 
・点CをAB上で動かす 
・△ECBを点Cで回転する 
A問題を知る。  
 
一斉 ・図形を動かすことで,親子ピラミッドの新しい性質を発見しよう 
 
予想 

12分   

 

△ECBを点Cで回転させると,点Fの動いた跡はどんな図形になるだろうか。 ・問題の提示をする。 
 
 

・GCで図形を動かせる

・机間支援をし,問題把握ができているかを確認しながら,予想させ,卓上カメラを使って紹介する。 学習プリント 
 
 
 
 
 

コンピュータ 
卓上カメラ 
 
 
 

コンピュータ 
一斉送信

3.予想する。 
@イメージ力で考えてみよう 
☆友達の考えを見る。 
AGCを使って考えてみよう 

B点Fの動いた跡を見て予想を確かめる

グループ 
 
 
 
 
 
 
 

一斉

・プリントの図を見て,イメージ力で予想してみよう・予想した図をかこう 

・GCを使って,予想したことを確かめてみよう 

・点Fの動きを表示して,予想を確実なものとしよう 
 

・確かめたことを学習シートにまとめよう。

机間支援で操作できているかを確認する
・画面転送で,点Fの軌跡を表示する。 ・画面を見ているか確認する。
机間支援でこれから証明することがらをシートにまとめているか確認する。
問題 

解決 

20分 

 

4.予想したことを証明する。 
@自分で考える 
A証明の見通しを確認する 

Bグループで練り上げる 

C全体で確認する

 

一斉 

  
グループ 
 

一斉

・4つの点ACFDが同一円周上にあることを証明しよう  
 
 

・4つの点が同一円周上にあることを証明するには,なにを言えばいいのだろう

  ・はじめに全体で見通しを立ててから、証明に進ませる。  
・机間支援で、進んでいないグループには、見通しの確認をして、援助したい。 
・証明できたグループをチェックしておく。 
・証明できたグループには、応用問題にチャレンジさせる。
・卓上カメラを使っての説明の援助をする。 ・発表の進行をする。
まと 
め 
6分
5.授業のまとめを聞く 一斉 
 
・証明のできたグループに発表してもらいましょう 
・自分の学習シートをまとめましょう。 
・親子ピラミッドのきせきは円であることが証明されました。
・卓上カメラを使っての説明の援助をする。 

  
・本時の学習のまとめをする。 

   
 
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(3) 選択数学における取り組み

★GCで折り鶴しよう

 折り鶴と数学の出会いを知ったのは2年前である。TTでコンビを組んだ荒牧先生に、インターネットを進めようと、長陽中の堀尾先生の折り鶴の実践がホームページに載っているという話をした。ところが、荒牧先生は、同じような事が書いてある本を持っているという。さっそく持ってきてもらったのが「折り紙と数学」―折り紙の数学的構成のアルゴリズム―堀井洋子著であった。折り方を教えてもらい、長方形で折ってみた。なるほど、形は不格好だがちゃんと鶴の形をしている。「おもしろい」と思った。平行四辺形やひし形でも折ってみた。そして、三角形でも折ってみた。感動であった。これまで、鶴は正方形で折るものだということを疑ったことはなかった。でも、現実に正方形以外でも折ることができる。不可能なことを可能にしたのが、数学の力なのである。「すごい」と思った。すぐ、生徒に自慢したくなった。自分が担当しているクラスで、鶴を折らせてみた。「へぇー、すごい」と生徒たちも驚いていた。そして、今度選択数学を持つ機会があったら、ぜひGCでやってみたいと思っていた。念願が叶った今年、1学期に「GCで折り鶴しよう」と題して、授業をしてみた。これは、その実践をまとめたものである。

@実践計画

時数 タイトル 学習内容
オリエンテーション 自己紹介、選択数学の説明
鶴を折ってみよう GCで折り鶴することの説明、GCの説明
GCで鶴の折り線をかいてみよう GCの操作練習、折り鶴の線をGCでえがく
長方形で鶴を折ろう 新しい折り方の実習、長方形での折り鶴作成
他の四角形で、鶴を折ろう 平行四辺形、ひし形、台形での折り鶴作成
最終課題(三角形)、まとめ まとめ、三角形での折り鶴作成

A基本的な考え

伝統的な鶴の折り方は、

ここまで折ったものを基本形とする。この状態で、広げて折り線を見てみると、図形的要素がたくさん含まれていることがわかる。2本の対角線で4つの三角形に分けられる。さらに、それぞれの三角形には、3つの内角の二等分線があり、その交点は内心になっている。

この続きは、

となり、鶴が完成する。ここで、伝統的な鶴の折り方から離れて、基本形の折り線だけを折り、一気にたたむと、基本形が出来上がる。


 この折り方を使うと、いろいろな図形で鶴を折ることができるのである。

B折り鶴とGC

 GCは、正方形からいろいろな図形へ変形するための道具として活用した。まずGCで、正方形の折り線を作図する。そして、正方形を目的の図形へと変形させることで、折り線も同時に変わっていく。後は、変形した図形を見ながら、折り鶴に挑戦するという流れで学習した。正方形から長方形、平行四辺形、台形、ひし形、タコ形、一般四角形。そして、最終目標は、三角形である。6時間の実践であるが、ただ鶴の折り方を学ぶのではなく、GCを通して、図形を楽しもうというのが目的なのである。

 

C生徒の感想より

○私は、選択の数学に入れて、とてもよかったと思いました。特に印象に残った授業は、やっぱり折り鶴です。初めて、数学的に解明しようと聞いたときは、折り紙に数学的なことがあるのかなと思いました。でもコンピュータを使ったりして、画面に折り鶴の線を入れて行くにつれて、ここの点は三角形の内心だったのかということや、ここの線は角の二等分線だったのかという驚きと発見で、毎週とても、次の選択まだかなと思えるくらいとても楽しくなりました。そして、私は折り鶴やその他の折り紙の折り方を考えた人はとてもすごいなと思いました。この折り鶴とかを考えたとき、数学の知識(角の二等分線)などはなかったと思います。他の折り鶴以外の折り紙の折り方でも、解明したりしたいと思いました。 

○僕は、はじめパソコン室で授業ができることと、数学が得意だからもっと伸ばしたいということにひかれて入って、授業を受けると、鶴を折ったり、正方形に線を引いたりして楽しかったです。どうやってパソコンに線を引いたらいいかを考えたりして、今まで考えることが嫌いだったのが、好きになるほど楽しかったです。後、いろいろな四角形で鶴を折るのも楽しかったです。授業中は、平行四辺形とひし形を折って、他の形でも鶴を折りたいと思って、家で他の形の鶴を折ったりしました。でも、三角形で鶴を折ることができなかったことが一番心残りなので、これから頑張って完成させたいと思います。元々は図形より計算の方が得意だけれど、図形もいいなあと思ったり、テストをやってもっと勉強して、もっと伸ばしたいと思いました。選択は数学にしてよかったと思いました。2学期も3学期も楽しい授業が受けれたらいいなと思いました。

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